花だより ~みをつくし料理帖特別巻~


第1作を読んではまった「みをつくし料理帖シリーズ」の後日談が書かれた特別編である「花だより」です。最終作である「天の梯」を読んだのはいつの頃だったのか思い出せず、発売日を見たら2014年で驚きました。もう、そんなそんな前だったのですね…せいぜい5年ぐらい前だと思ってました。特別編が発売していたのは知っていたのですが、電子書籍版が発売されていないのもあって、なかなか買って読む機会がなかったのですが、今回時間があって読めました。このブログでも過去の記事として書いていた記憶があったのに、単独の記事としては感想を書いたことがなかったようです。もう自分の記憶も時間感覚もあてにならないですね。

もう最後に読んでから7~8年は経ってるので、細かいことは忘れてしまっていたのに、久しぶりに読んでみたら、この世界観と登場人物達の特徴はすぐに思い出しました。そうそう、これこれ。一流の旅館で一泊して、朝に和定食を食べたみたいな気持ちになれるのが、みをつくし料理帖ですよ。これを読んでいるときは、現代の喧騒を一時でも忘れて読書の世界に浸れます。ドラマや漫画版は未見ながら、小説としての良さには太鼓判を押せます。中学・高校の教科書に載せても良いんじゃないかと思えるぐらいです。

今作の各話の簡単な紹介はAmazonからの引用で以下に紹介します。

店主・種市とつる家の面々を廻る、表題作「花だより」。
澪のかつての想いびと、御膳奉行の小野寺数馬と一風変わった妻・乙緒との暮らしを綴った「涼風あり」。
あさひ太夫の名を捨て、生家の再建を果たしてのちの野江を描いた「秋(しゅう)燕(えん)」。
澪と源斉夫婦が危機を乗り越えて絆を深めていく「月の船を漕ぐ」。
それぞれ主役は違うものの、共通のテーマは「愛」でしょうか。「恋」ではなく「愛」ですね。…なんて書くとこっぱずかしいのですが、登場人物たちが誰かを想い、それを食を通じて表現するのがみをつくし料理帖の醍醐味ですね。それを人情物語みたいに呼ぶと、どこか安っぽい響きを含まなくもありません。どの話が一番好きだったかを問われれば、どれも良かった!というのがありきたりな答えですかね。その中でもあえて選ぶなら、「月の船を漕ぐ」でしょうか。澪がつくる料理はどれも読むだけで美味しそうだったのを思い出し、これを読んで味噌汁が飲みたくなりました。そして、偶然にも新型コロナウイルスが蔓延し、医療が不安に包まれた現代にも通じる話になっていて驚きました。「病知らず」なんて料理がこの世界に存在すれば、どれだけの人が救われることかと考えてしまいました。でも、人の心という意味では、「病知らず」という料理は本当に存在するのかもしれません。

小学生のころ、国語の時間に「情景を思い浮かべる」ということを学びました。書いてあることをそのまま文字として受け取るのではなく、文章から何かしらの風景をイメージとして浮かべるというようなことですね。みをつくし料理帖は、本当はそんな時代だったかも分からない、まったく見たことのない江戸時代をなぜか身近に感じて、その情景を浮かべることができるのです。

この特別巻を読んで、また最初から改めて読みたくなりました。初めて読んだ時から心を奪われましたが、年を取るにつれさらに面白さが増す小説じゃないでしょうか。60歳ぐらいになって読んだら、毎話読むたびに泣いてるかもしれません。みをつくし料理帖、心が疲れていると感じる方、現代の喧騒を少しでも忘れたい方、食に興味関心がある方、すべての読書家におススメです。

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