久しぶりの少女漫画探訪になります。
ざっとしたあらすじは以下の通り。
ひたすら周囲に気を配り、一見その場に適用しながらも「なんだかなぁ」と
生きてきた凪にとって職場のできる男慎二が恋人なのが唯一心の拠り所であったが、
ある時に彼と同僚達の会話を耳にして絶望する。
それをキッカケに、空気を読む体質と仕事と都会生活と慎二を手放し、
郊外で自由気ままな暮らし始めるのだが……。
それでも逃れられない現実と性分と追手はやってくる。
はたして凪はお暇生活から幸せを見つけることはできるのか!?
物語の始まり時点で、凪自身の内心を除いた外面だけ見れば、
恵まれている環境で暮らしていて、少女漫画的にはゴール状態と言えます。
~外面から見える凪の状況~
①都心で暮らしており仕事でも頼られている
②同僚の女性達と良好な関係を築き女子会に誘われたりする
③同僚のできる男(慎二)と付き合っている
このうち、①、②は何も知らなければ「あら、いいですね~」なんですが、
凪的には無理をしているので、心から望んでいる状況ではありません。
実際には、面倒な仕事を押し付けられてるだけですし、
女性達も凪を自分よりヒエラルキーの下に押しやるために誘ってるだけの様です。
それでも何とか平静を保っているのは、③が拠り所になっているからです。
多くの少女マンガでは、この③にたどり着くまでの過程を描くところを
既にゴールしているのだから、そこだけは恵まれていると言えなくもない。
しかし、慎二のろくでなし発言によって③を手放して「凪のお暇」は始まります。
この流れに共感する人は老若男女問わず多いと思います。
外からは恵まれていると見られていても、本人には何らかの不満や不安があって、
何かをキッカケに崩壊する瞬間がやってくる。そして大なり小なり、
自分にとってのお暇(仕事を辞める、恋人と別れる、引っ越す等)を頂戴する。
実際行動しないまでも、したくなる。人間誰しも思う普通のことです。
さて、これまでの生活を投げうったから、心と体をリフレッシュできる
お気楽ハッピー人生が始まるか?と思いきや、それもまた簡単ではありません。
仕事をしてないわけだから貯金は切り崩すしかないし、
ご近所や家族の目だってあるし、恋人からも完全に開放されたわけでもない。
何より生まれ持った性分からは、いくら生活を変えても逃れられないわけです。
特に凪にとってネックなのは元彼である慎二が凪を尾行してきたことでしょう。
これが、本作の意外かつ面白いところで、慎二には慎二なりの思いがあって、
ただのろくでなしの悪い奴には留まらない展開になります。
第1話だけ出てくる胸糞悪い奴で終わらせても成立してるキャラなんですが、
凪にとって「逃れられないもの」を表す役割として、見事な憎まれ役を演じます。
凪にとって、慎二はステータスのためだけの存在だったのか?
慎二にとって、実は凪こそが心のオアシスだったのか?
付き合っていた頃とは立場も想いも何もかも反転したかのように見えます。
二人の本心と未来はまだ予想もつかないのが面白いところです。
凪はお暇で、新しい生き方を見つけて幸せになるのか。
それとも、お暇生活を経た後、もう1度社会に復帰するのか。
3巻まで読みまして、4巻も近々発売する様で楽しみです。
来年の「このマンガがすごい!」で上位に顔を出すでしょうし、
数年の内にドラマ化かアニメ化の可能性大と予想しますので、
今のうちに要チェックしておいて損なし作品だと思います。
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