文字語り:雷プリン

他愛もない小学生の思い出。

年を取ると昔のことはよく覚えているけど、最近のことは覚えられなくなる。
子供の頃はまったく理解できなかったが、最近はわりとその通りだと思えてきた。
今でもドラゴンボールの内容は覚えているのに、数年の内に読んだマンガや小説は
概要を薄っすらとしか覚えておらず、主人公の名前等も忘れていたりする。
そんなわけで、年を取った人間の行き着く先、学生時代のエピソードトークだ。

予め言っておくと、この話に特段のオチはないし、心がスッキリする話でもない。
ただただ、小学生時代の思い出としては、今でもなぜか強く印象に残っている。
言うなれば、小学生エピソードの「純情パイン」である。(どうでもよく分かり難い例え)


それは小学校高学年(おそらく5年生)のとある給食の時間に起きた。
給食の時間といえば、クラスメイトと席を寄せ合ってワイワイガヤガヤ
話しながら給食を食べて一息つく、ほとんどの子供は好きな時間である。
牛乳を含んだ奴を笑わせて惨事が起きたり、給食を残すことを
この世で一番の悪とみなす極端な先生の暴論等によって、
たまに平穏が乱されることはあっても、大体は愉快な思い出しかない。
その日もデザートにプリンが出たものだから、あまったプリン(休みの子の分)
を食いしん坊万歳共がジャンケンで争奪戦をする愉快な催し物が行われていた。

これは余談であるが、給食で起きるこの手の食いしん坊万歳イベントに
一度も参加したことがなかった。実際に小食だった事実もあるが、
この愉快なイベントを卑しく恥ずかしいものと感じていた節があった。
そう思っていたことが今となっては逆に恥ずかしい。
子供はよく食べてナンボである。他人の給食を奪う輩は
ジャンプの角で頭をぶたれるべきだが、正々堂々とジャンケンに
参加する子供はファイターだ。張○さんもアッパレをやってくれるだろう。

さて、話を本題に戻そう。
しかし、なぜかその日は給食の時間も終盤に差し掛かったところで、
当時担任の先生(体育会系の若い女性であった)が、カミナリを落としていた。
波平やピカチュウでなくても、カミナリを自由に落とせるのが学校の先生に
与えられた特典であり、喰らった子供達にとって大抵は「効果はバツグンだ!」になる。

その先生は、教室内を徘徊しながらカミナリを落としていった。
今となっては、何が原因で給食の時間、それも終盤でカミナリが発生したのか
まったく記憶にないのだが、特定の誰かを怒っているのではなく
クラス全体を怒っていたことと、やはり「効果はバツグンだ!」ったことは
覚えている。先生のカミナリの威力に、子供達は震えて縮み上がった。
ただ一人のアッパレなファイター(K君)を除いて。

その刹那、プリンを食べていたK君(ちびまる子ちゃんの小杉似)の席で、
先生は机を叩きながら声を張り上げた。
「いまプリンなんて食べてんじゃねえッ!!!」
なんと、先生がカミナリを落としている最中、K君は夢中でプリンを食べていたのだ。
実は私からもそれは確認できていた。教室でカミナリが発生している中で、
K君がプリンを「トゥルル」と美味そうに吸い上げているその様子を。

これは今でこその勝手な推測だが、K君は食いしん坊ジャンケンで勝利して、
2個目のプリンをゲットしていたのではないか。他の子は大半給食を食べ終えて
いたのに食いしん坊のK君がまだ食べ終えてなかったのは、そうとしか思えない。

K君にとっては、2個目のプリン>>>先生のカミナリだったのが、
自分に直接落とされたことで、先生のカミナリ>>>プリンとなり、
みるみる内に啜り泣き状態となった。

その後のことは、驚くほどまったく覚えていない。
K君がプリンを食べていて猛烈に怒れたことが私にとって記憶の全てである。
先生の怒りが収まった後、K君はプリンをどうしたのだろうか。
願わくば、最後まで食べ終えていて欲しいと思う。
学校の先生へ。給食の時間、特にプリンを食べてる子へのカミナリは控えてあげてください。

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